Q&A
今回の講義は主に、イスラム教の基本や変化というのが中心だなと感じたのですが、「現代のイスラム教」で一番これまでと変わってきている、これは決して変わっていないというのはなんですか。なぜ、研究対象にキリスト教やヒンドゥー教、仏教ではなくイスラム教を選んだのですか。
私はキリスト教系の幼稚園に行ったり、高校留学の際にお世話になったホストファミリーが牧師一家だったり、どちらかというとキリスト教に親しんできました。実家は日本の一般的な家庭で仏教と神道に少しずつ関わっていました。それなのになぜ、イスラーム教に関心をもったのか。きっと、まったく知らなかったからだと思います。大学ではペルシア語を専攻しましたが、選んだ当初、それが「イラン」や「アフガニスタン」で使われる言葉ということも知りませんでしたし、それらの地域でイスラーム教が広く信仰されていることも大学に入学してから知りました。新しいことを知ったり、自分とは違う思想や価値観、習慣をもつ人と話をしたり、それらを理解しようと努めたりするのは、大変な部分もありますが、わくわくする体験でした。 前近代と近現代で一番大きく変わったのは、イスラームの知識を誰が伝えるかという点だと思います。かつてイスラームに関する知識は、もっぱらウラマーと呼ばれる伝統的教育を受けた男性によって伝えられてきました。それが近代以降、伝統的教育以外——たとえば西洋的枠組みによる教育を受けた人々もイスラームについて語るようになりました。20 世紀になって学校教育が行き渡る中、宗教識字のある層はさらに広がり、また情報メディアが増えていくことで、自分でクルアーンなどの聖典を繙いたり、過去に書かれた宗教文献を読んだりしながら、自分自身のイスラーム理解を育み、また発信しようとする人が増えていきました。その中には女性たちもいました。最近、私が関心を持っているのは、イスラームの枠組みの中で男女平等は確立しうるかという問いです。クルアーンの中には男女の違いと読める文章がいくつかあります(一夫多妻婚に関する4章3節もその一つですね)。それをどのように理解すると、男女平等という結論になりうるのか。気になる方はぜひ、下の小文を読んでみてください。 後藤絵美「男女間の「平等」をめぐって」東京外語会会報154, 2021. https://drive.google.com/file/d/180_vjgBCuYFgLYSH7QpIHoHVPyGSKCpe/view?usp=sharing