放浪人種と呼ばれて–ヨーロッパの定住主義とロマ(2回目オンデマンド配信)
講師
岩谷彩子先生(京都大学大学院 人間・環境学研究科教授)
概要
ヨーロッパ各地で生活しているエスニック・マイノリティ、ロマ。「ジプシー」と呼ばれてきた彼らは、インドから世界に離散した人々であるとされる。土地を所有してこなかった彼らは、行く先々で差別や迫害を受け、移動生活を余儀なくされてきた。そんな彼らに対して19世紀にささやかれたのが、生まれながらに「放浪欲動」をもつとされる人種の議論であった。移動という生活形態が「人種」として語られ、差別の根拠となる時、どのようなことが起きるのか、ロマを取り巻く政策やまなざしの中で生じる人種差別の問題について考えてみたい。
プロフィール
講師:岩谷彩子先生(京都大学大学院 人間・環境学研究科教授)
1972年、鳥取県生まれ。鳥取県立鳥取⻄高等学校在学中に、アメリカ合衆国に府県交流生として交換留学。ロンドン大学政治経済学院(LSE, MSc in Social Anthropology)、京都大学大学院人間・環境学研究科で文化人類学を学ぶ。 博士(人間・環境学)。広島大学大学院社会科学研究科准教授を経て現職。 主な著書は『夢とミメーシスの人類学―インドを生き抜く商業移動⺠ヴァギリ』(明石書店、2009年)、『映像にやどる宗教、宗教をうつす映像』(共編著、せりか書房、2011年)、『官能の人類学―感覚論的転回を超えて』(共編著、ナカニシヤ出版、2022年)、論文に「起源から遠く離れて―ギリシャにおける『ジプシー』の起源と帰属」(『宗教研究』398号、2020年、29-56頁)、「表面的音楽−ルーマニアのマネレがつなぐ世界」(『arts/』vol.37、2021年、26‐37頁)など。
文化人類学は、現在、自分とは異なる環境で生きている人々や文化から学ぶことで、人間、そして自分についてとらえなおす学問です。自分とは異なる環境で生きている人々―それは遠い外国に住んでいる誰かとは限りません。隣の席の友達、自分の家族や先生も、「私」とは異なる環境で生きてきた人々なのです。グローバル化が進む現代社会において、すでにみなさんはさまざまな物事に触れ、他者とすれ違っています。ふとその他者のことが気になった時、文化人類学的な問いは始まっています。私の場合、漫画や小説に描かれた「ジプシー」の人々の姿がきっかけでした。いまもロマ(「ジプシー」)の人々のもとに通い、出会いつづけているのは、気づいていなかった自分自身なのかもしれません。
参考文献
岩谷彩子、2008、「表象の彼方へ―出会いそこね続ける『ジプシー』のために」、『はじまりとしてのフィールドワーク-自分がひらく、世界がかわる』(李仁子・金谷美和・佐藤知久編)、昭和堂、66-85頁。
――――、2016、「『移動民族』としてのロマと新人種主義―ヨーロッパ域内の人の移動をめぐるポリティクス」、『人種神話を解体する 第1巻Invisibility―「見えない人種」の表象』(斉藤綾子・竹沢泰子編)、東京大学出版会、189-122頁。
竹沢泰子(編)、2005、『人種概念の普遍性を問う―西洋的パラダイムを超えて』、人文書院。
フレーザー、2002、『ジプシー-民族の歴史と文化』(水谷驍訳)、平凡社。
チラシ